2-1. 糖尿病性腎症のプロテオーム解析(GKラットのプロテオーム解析)

Goto-Kakizakiラットを用いたプロテオーム解析からわかってきた糖尿病性腎症における線維化のメカニズム

糖尿病は近年ますます増えてきており、平成28年「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者と糖尿病予備軍は合わせて約2,000万人と推計されています。糖尿病の合併症のひとつである糖尿病性腎症は、合併症の中で最も罹患率と死亡率が高く、糖尿病の予後を悪化させる主な原因となっています。慢性的なタンパク尿、糸球体肥大、糸球体濾過能の低下、腎組織の線維化などの症状が知られていますが、病態メカニズムの詳細は明らかになっていません。そこで私たちは、II型糖尿病モデルラットであるGoto-Kakizaki ラット (GKラット)を用いて、糖尿病性腎症の病態メカニズムを明らかにしようと考えました。

GKラットはWistarラットを基盤とし、耐糖能の低下した個体の選抜交配により確立された系統です。高血糖のほか、インスリン分泌不全、インスリン抵抗性を示しますが、肥満や高血圧はありません。合併症としては腎症、網膜症、末梢神経障害を引き起こし、腎症においては腎糸球体基底膜の肥厚や尿中微量アルブミンが認められるなど、初期の糖尿病性腎症の特徴を持ちます。このため、GKラットは日本人のII型糖尿病に多い非肥満やインスリン分泌低下型のモデルとして適しており、糖尿病性腎症の発症メカニズムを研究するのに有益であると考えられます。

 

私たちはGKラットと対照群であるWistarラットの腎組織について、蛍光標識ディファレンスゲル電気泳動 (2D-DIGE)を用いてプロテオーム解析を行い、GKラットの腎線維化にフマル酸の蓄積が関与していることを明らかにしました。(Arch. Biochem. Biophys. 678, 108167, 2019)

GK_図1 GK_図2

TCA回路:トリカルボン酸回路, OGDH: 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ, FH: フマル酸ヒドラターゼ, TGF-b1: トランスフォーミング増殖因子ベータ1, HIF-1a: 低酸素誘導因子1アルファ