2-2. 血しょうタンパク質糖鎖から健康長寿の秘訣を探る(プロテオーム解析)

タンパク質からみた健康長寿の秘訣

病気や老化に伴って異常なタンパク質が蓄積するなど、様々なタンパク質が変化することはよく知られています。タンパク質は生命活動を担う機能分子なので、タンパク質に異常が生じると細胞や組織の機能が低下するのです。では、病気ではなく「健康長寿」に関わっているタンパク質はあるのでしょうか?もし、健康長寿に関わるタンパク質を増やすことができれば、健康寿命を延ばすことができるのでしょうか?そこで私たちは「健康長寿に関わるタンパク質」を調べるため、「健康長寿を達成している人たち」のタンパク質を調べようと考えました。

慶應大学百寿総合研究センター(広瀬信義博士、新井康通博士)との共同研究で、治療中の疾患のない超百寿者(105歳以上)の血しょうタンパク質のプロテオーム解析を行い、若齢者(20歳〜39歳)と比較しました。その結果、若齢者に比べて超百寿者では、抗酸化活性を持つタンパク質であるParaoxonase/arylesterase 1が少なく、酸化ストレスによって増加することが知られているHaptoglobin、α1-Microglobulin、Clusterinが多いことが明らかになりました。つまり超百寿者では、抗酸化作用を持つタンパク質が減少して酸化ストレスが生じ、それに応答するタンパク質が増えたのではないかと考えられます。(Exp. Gerontol. 46, 81-85, 2011)

酸化ストレスは様々な疾患に関与するだけでなく、老化のプロセスにも関与することは、よく知られています。超百寿者のタンパク質解析の結果から、健康長寿を達成している人も酸化ストレスの増加からは、免れていないのだ、ということがわかりました。「健康長寿の秘訣」は、酸化ストレスをなくして酸化ストレスから逃れることではなく、酸化ストレスと上手くつきあうことにあるのかもしれません。

SSC プロテオーム 図1図 「酸化ストレス」と「防御力」のバランスが保たれていることが重要なのではないか?